2025.06.26
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【加工屋が解説】「シャフト」って何?
皆様、こんにちは。
私たちは長年、旋盤加工と研磨加工を専門に、お客様へ高精度なシャフト部品をお届けしている製造メーカーです。
「シャフト」という言葉は耳にしたことがあっても、それがどのような役割を果たしているのか、どのように作られているのかご存知でしょうか?
今回は、私たちのような「加工屋」の視点から、普段は縁の下の力持ちとして活躍している「シャフト」について、その種類から精密加工のポイントまで、徹底的に解説します。
1. シャフトとは?その役割と加工屋のこだわり
シャフトとは、一言でいうと「回転運動を伝えるための棒状の機械部品」です。
自動車のエンジンから、工作機械の主軸、モーターの回転軸、プリンターのローラーまで、あらゆる機械の動力源や回転機構に欠かせない、まさに「機械の背骨」とも言える重要な部品です。
単純な棒に見えるかもしれませんが、私たちの加工現場では、このシンプルな形状にこそ「ミクロン単位の精度」が求められます。
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・真円度(しんえんど): 断面がどれだけ真円に近いか
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・同軸度(どうじくど): 複数の軸がどれだけ中心を共有しているか
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・振れ(ふれ): 回転時にどれだけブレがないか
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・表面粗さ(ひょうめんあらさ): 表面の滑らかさ
これらの精度が確保されていないと、回転時の振動や騒音の原因となり、最悪の場合は機械の故障に繋がります。シャフトの品質は、機械全体の性能を左右するのです。
2. シャフトの種類とそれぞれの活躍の場
シャフトは、その役割や形状によって多岐にわたります。主な種類と用途をご紹介します。
用途別に見るシャフトの種類
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・駆動軸(ドライブシャフト): エンジンの動力をタイヤに伝える自動車の重要部品。高トルクに耐える強度が必要です。
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・クランク軸(クランクシャフト): エンジンのピストン運動を回転運動に変える心臓部。複雑な形状と高い精度が求められます。
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・スピンドル(主軸): 工作機械で工具やワーク(加工物)を回転させる軸。加工精度に直結するため、特に高い剛性と精密な真円度が要求されます。
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・車軸(アクスルシャフト): 車輪を支える軸。曲げやねじれに強く、耐久性が重視されます。
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・段付きシャフト: 軸の直径が途中で変わるシャフト。段差部分にギアやベアリングを固定するために使われます。
これらの用途によって、シャフトにかかる負荷や求められる精度は全く異なります。私たち加工業者は、お客様の用途をヒアリングし、最適な加工方法を提案します。
3. シャフトを形にする加工技術
私たちが得意とする、シャフト加工の主要工程をご紹介します。
特にΦ50以下の小径シャフトの製造を得意としております。
・旋盤加工
丸い棒状の素材をチャックで固定し、回転させながらバイト(刃物)を当てて削り出す加工です。
外径のサイズ出しはもちろん、段付き加工、溝入れ、ねじ切りなど、シャフトの基本的な形状を作り上げます。
真円度や同軸度を出すための「芯出し」は、加工の成否を分ける重要な職人技です。
・研磨加工
旋盤加工で大まかな形を作った後、「ミクロン単位の公差」や「鏡のような表面(鏡面加工)」を実現するために行うのが研磨加工です。
回転させたワークを砥石で削ることで、旋盤では達成できない超高精度な寸法や表面粗さを実現します。特にベアリングがはまる部分などは、研磨によって滑らかな表面に仕上げることで、機械の寿命を延ばすことができます。
この2つの加工を組み合わせることで、高精度なシャフトが完成するのです。
・マシニング加工
旋盤加工では難しい、「シャフトの側面への加工」を行うのがマシニング加工です。
例えば、
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シャフトの側面にボルトを通すための「穴あけ加工」。
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キーをはめ込むための「キー溝加工」。
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平らな面を作り出す「平面加工」。 など、シャフトに回転対称ではない特徴を付与する際に不可欠な工程です。 旋盤で加工した軸の中心に対して、正確に位置決めをして加工を行うため、高い技術力が求められます。
4. 材質とサイズが左右するシャフトの可能性
シャフトに使用される材質は、用途やサイズによって多岐にわたります。
材質別に見るシャフトの使用分野
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・炭素鋼(S45Cなど): 強度と加工性のバランスが良いのが特徴です。一般的な機械部品や、熱処理を施して強度を上げる用途に適しています。
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・合金鋼(SCM440など): クロムやモリブデンなどを添加し、炭素鋼よりもさらに強度や粘り、耐摩耗性を高めた材質です。自動車のドライブシャフトなど、高負荷がかかる部品に使われます。
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・ステンレス鋼(SUS304など): 錆びにくく、耐食性に優れているのが特徴です。食品機械や医療機器、化学プラントなど、サビを嫌う環境で使用されます。
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・特殊鋼: 工具鋼(SKD)や高速度鋼(SKH)など、さらに高い硬度や耐摩耗性が求められる場合はこれらの材質が使われます。加工が非常に難しく、熟練した技術が必要です。
サイズによっても加工の難易度は変わります。
大径のシャフトは剛性が高く安定した加工ができますが、小径のシャフトはわずかな力でたわんでしまうため、高い技術とノウハウが不可欠です。
当社では小径のシャフトの製造に関して、長年培った技術で対応可能となります。
最後に
シャフトは、私たちの生活を支える様々な製品の中に組み込まれています。
単純な「棒」の加工に見えるかもしれませんが、そこには長年の経験と、培われた職人の技、そしてミクロン単位の精度を追求するこだわりが詰まっています。
もし、貴社でシャフトの加工にお困りのことがあれば、材質やサイズ、求められる精度に応じて最適なご提案をさせていただきます。
お気軽にご相談ください。